お月見泥棒
「ねぇ」

 女人が縁側に座り、三人にお供え物を渡しながら言った。

「この奥の祠でも、お供え物してるわよ」

 また三人は顔を見合わせた。
 しばしの沈黙の後、伸太が口を開く。

「うん。でもあそこのお供えは、盗っちゃいけないって」

「何故? あれだってお月見のお供えでしょう?」

「そうだけど……。あそこだけは駄目だって、ばあちゃんがきつく言うんだ」

 喜助が言い、三人とも頷く。
 そんな三人を眺める女人の目が細くなった。

「そう……。おかしいわね。祠のお供えこそ、皆で分け合うものじゃないかしら。もしかしたら、大人だけで分けるために、子供は駄目って言ってるのかもしれないよ?」

「え……」

「この子がね、凄く立派なお供えがあったって言ってたわよ?」

 女人に言われ、女児が頷く。

 五つぐらいだろうか。
 おかっぱ頭に大きな目。
 女人にそっくりの美しさだが、庄屋の面影は全くない。
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