お月見泥棒
「……」

 融は扉を凝視した。
 あの騒がしい喜助が、食べたこともないようなお団子を前にして、こんなに静かにしているはずがない。

 それに、中に三人もいるのだ。
 かさりとも音がしないのは、どう考えてもおかしい。

「し、伸太……」

 震える声で言い、融は手を扉に差し出しながら、一段階を上がった。
 その途端。

 いきなり物凄い風が、祠の中から吹き出した。
 ばぁん、と内側から扉が開く。

 むわっと、あの臭いが融の鼻をついた。
 さっきとは違う、もっと濃厚で粘りつくような、この臭い。
 これは……。

---血の臭い……---
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