【短】花と蝶の物語
花と蝶の物語







ヒラリと舞う一羽の蝶。


羽を休めるかのように、そばの小さな一輪花にとまった。


白く小さな花だった。


風が吹き、揺れ動く花に身を任せながら、
蝶はその甘い蜜を吸い、

再びヒラリと舞った。



そして果てなき碧空にむかってとんでいく。


周りの草がそよそよと葉をならす。



花は、何も言わない。

何も言えない。



ただ、そこにひっそりと咲いている。


雨も降っていないのに、露(つゆ)が花弁に一雫。



誰にも知られることなく、静かに零(こぼ)れた。






< 1 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop