オーロラの歌



それにしても、何だこの本は。


その本の表紙には、“禁断の魔法書”と書かれていた。


いかにも、危なそうな本だな。


まあ、いっか。本の内容になんか興味はないんだ。


本を盗んだことに、意味がある。



『ラジっ!』



逃げようとした俺の肩を掴んだ校長先生は、俺の手から本を取り戻そうとしてきた。


こんなに焦ってる校長先生を見るのは、初めてだ。


そんなにこの本が大事なのか……?



せっかく奪ったのに、今校長先生に取り返されちゃ、イタズラが成功したとは言えない。


俺は、俺の肩を掴んでる校長先生の手首を握り、無理やり引き剥がした後、校長先生の胸板を強く押した。


バランスを崩した校長先生は後ろへと倒れていき、――カシャンッ、と持っていたライターを床に落としてしまった。



火が点いた、ライターを。



やばい、と思った時には既に遅く。


ライターの炎は、本棚も本も、床に敷いてあったカーペットも、扉も窓も、この部屋全てを、燃やしていった。



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