オーロラの歌
握り締めた拳に、オーロラがそっと触れた。
「ラジが、うなされてたから」
「え?」
「だから、起こさずに歌を歌ったの」
俺の拳を、オーロラの両手が包み込む。
心臓が高鳴りながら、揺れた。
あの歌は、幻聴じゃなかったんだ。
「苦しんでる人を、さらに苦しめるわけにはいかないよ」
俺が夢に、過去に、苦しんでいたから、起こさなかったのか?
夢の世界から覚めても、また苦しむかもしれないから?
金も真犯人も見つけられずに悩んでる、理不尽な現実の世界で。
オーロラは、優しすぎる。
こんな俺のことを想って紡いでくれた歌は、まだ耳の奥に残っている。
昔から、俺は助けられてばかりだ。