オーロラの歌
この街の住人なら、知っている。
あの山を一日で登れたとしても、下山するのに最低二日はかかるということ。
つまり、俺にはアリバイがある。
一億テラスを盗んだ犯人ではない、完璧な証拠だ。
「これで、ラジが犯人ではないことを、信じてもらえますか?」
オーロラがそう問いかければ、街の皆も町長も、気まずそうに目を泳がせた。
街の皆の心には、俺の信用が明瞭に欠けている。
ひとつの事件の無罪が明らかになっても、そう簡単に信用を取り戻せるわけではない。
でも、受け入れてほしいんだ。
俺が変わっていっていることを。
昔の自分とは、決別したということを。
「あ、言い方を間違えました」
腕を下ろしたオーロラは、柔らかく微笑んだ。
まるで、オーロラが持っている真っ白な花のように。
「どうか、信じてください」