オーロラの歌



わかった。わかったから。


お母さん、泣かないで。



私から一歩遠ざかったお母さんは、小さく微笑むと、私のおでこにキスをした。


とても冷たいお母さんの唇から伝わるのは、たったひとつの想い――『愛してる』。



一瞬の口づけ。


お母さんの唇が、離れる。


すると、お母さんの姿が、足元から徐々に消えていった。



『ま、待って!行かないで!消えないで!』



必死に声を出すけど、お母さんは泣きながら笑ったまま。


嫌だよ。


せっかく会えたのに。


また、お別れするなんて。



『お母さん!』


『オーロラ』



消えかかっているお母さんの手が、私の頭に触れる。


懐かしくて、優しい、大好きなお母さんの手。



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