オーロラの歌



これが夢だと、気づいていた。


だけど、気づいちゃいけなかった。


たとえこれが幻でも、私が創った夢でも、お母さんとの時間を嘘だとは思いたくなかったから。



温度を感じないお母さんの手が、キラキラと眩い光を放ちながら、消えていく。



『あなたの幸せを、願っているわ』



お母さんは最後にそう言い残し、姿を光へと変えて、天高く昇っていった。



あぁ、そうだ、思い出した。


お母さんの言葉を知っていたのは、前にお母さんが贈ってくれた言葉だったから。


お母さんが亡くなる直前に、託された手紙。


そこに、綴られてあった言葉だったから。



夢の終わりが、近づいて。


夜が明けて、朝が来る。


昨日の続きが、“今日”が、やってくる。



悲しさばかりを抱いているわけにはいかない。


夢には、すがらない。


お母さんの願いを胸に刻んで、幸せの欠片が散らばる現実を迎えよう。



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