オーロラの歌





「そんなアンジェラス様を助けたのは、あなた様のお父様であられる、“ジャック”様です」




私の、お父さん……?


私にお父さんがいることも、お母さんがこんなにも辛い運命を歩んできたことも、お母さんは教えてくれなかった。


お母さんが死ぬ間際に渡してくれた手紙にだって、書いてなかった。


何も教えてくれなかったのも、私を守るためなの?



「元魔法使いだったジャック様は、得意な空間の魔法の一つであるテレポーテーションで、アンジェラス様と、アンジェラス様の侍女も務めていた私を、あまり人が訪れないジェネシスの森へ飛ばしました」



ジェネシスの森、という言葉に、私とシエルがピクリと反応する。


お父さんは自分を犠牲にして、お母さんを女王様から逃げ延びさせるために、できるだけ安全で、女王様にすぐに嗅ぎつけられない場所を選んで、ジェネシスの森に移動させたの?



「それから、ジェネシスの森の奥の奥の、そのまた奥に小さな家を見つけ、私はアンジェラス様がオーロラ様を産むまで、アンジェラス様に仕えておりました」


「その間に女王様が、王家の殺害を隠して、国王の位に即いちまったってわけか」



ウメおばあちゃんの話に付け足すように、ラジが言う。



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