オーロラの歌



無意識に、拳を強く握りしめていた。


痛みで手を開くと、くっきりと爪痕が残っていた。



「オーロラの父親は、どうなったんだ?」


「ジャック様は、亡くなられました」



シエルの疑問に、ウメおばあちゃんはひどく悲しげに答えを呟いた。


もう、私のお父さんは、この世にはいないんだ。


一度でいいから、会いたかったな。



「どんな方法を使ったのかはわかりませんが、イービル様はジャック様と婚姻し、一人の子どもを授かりました。その数年後のことです。ジャック様が病死したと、イービル様が告げたのは」



ウメおばあちゃんは、「ですが」と続けて話す。



「私は、病死ではないと考えております。おそらく、イービル様に殺されたのでしょう」


「どうして……!?」


「イービル様が望んだのは、後継者のみ。夫という存在……しかも、元はアンジェラス様の夫であったジャック様は、邪魔でしかなかったのだと思います」



涙が、こみ上げてきた。


視界が、ぼやける。



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