オーロラの歌
広間に行くと、既にお父様とお母様が椅子に座って、あたしとアンジェラスを待っていた。
長いテーブルの奥の方には、いつもと同じく、美味しそうな朝食が用意されている。
『おはよう、二人とも』
『イービル。アンジェラス。昨日はぐっすり眠れた?』
お父様のテノールの声が紡ぐ挨拶も、お母様のひだまりみたいな喋り方も、あたしの耳を撫でているかのようだ。
あたしとアンジェラスは二人に挨拶を返して、いい夢を見れたことを話しながら椅子に座る。
いただきます、と皆で声を合わせて言ってから、朝食を食べ始める。
王族らしく、上品に。だけど、楽しく。
『今夜は、イービルの誕生日会だな』
『その時に皆で、おめでとう、とお祝いするから、イービル……楽しみにしていてね』
お父様とお母様が、あたしを優しく見つめる。
城に仕えている使用人達は、廊下であたしとすれ違うと『お誕生日おめでとうございます』と言ってくれたのに、家族は言ってくれなかったから、本当は悲しかった。
忘れられちゃってるのかなって、落ち込んでいた。