オーロラの歌




広間に行くと、既にお父様とお母様が椅子に座って、あたしとアンジェラスを待っていた。


長いテーブルの奥の方には、いつもと同じく、美味しそうな朝食が用意されている。



『おはよう、二人とも』


『イービル。アンジェラス。昨日はぐっすり眠れた?』



お父様のテノールの声が紡ぐ挨拶も、お母様のひだまりみたいな喋り方も、あたしの耳を撫でているかのようだ。


あたしとアンジェラスは二人に挨拶を返して、いい夢を見れたことを話しながら椅子に座る。


いただきます、と皆で声を合わせて言ってから、朝食を食べ始める。


王族らしく、上品に。だけど、楽しく。



『今夜は、イービルの誕生日会だな』


『その時に皆で、おめでとう、とお祝いするから、イービル……楽しみにしていてね』



お父様とお母様が、あたしを優しく見つめる。


城に仕えている使用人達は、廊下であたしとすれ違うと『お誕生日おめでとうございます』と言ってくれたのに、家族は言ってくれなかったから、本当は悲しかった。


忘れられちゃってるのかなって、落ち込んでいた。



< 229 / 888 >

この作品をシェア

pagetop