オーロラの歌



いやな汗が、背筋を伝う。


張り詰めた空気が、あたしの喉を絞める。



『イービル』



お父様の……いや、王様の声で、あたしを呼ぶ。


心臓の大きな音に負けないように、『はい』と返事をすると。



『お前が生まれてきたのは、五年前の今日、午前九時ちょうどだ』



何を言い出すかと思えば、誕生日の話だった。


それが、何?


首を傾げるあたしに、今度はお母様が口を開く。



『この国では、能力を持った者は、五回目の誕生日を迎えた時に初めて、能力を発動するの』


『能力……?』



そういえば、お父様はいやしの歌という能力を、お母様は雷を操る能力を持っていた。


つまり、あたしにもその能力があるかもしれないってこと?


ざわめいていた心がスッと晴れていくと同時に、大きな期待が積もった。



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