オーロラの歌
歪みきった心を、修復するには既に遅く。
後戻りをしようにも、振り返ってもそこにリセットボタンも、歩いてきたはずの道もなく。
最終手段を実行して、悪霊と契約してしまえば。
待っているのは、前に毒だらけのあたしだけの世界、後ろに悪霊の住処である地獄。
五歳になる前は、幸せだった。
毎日が、楽しかった。
アンジェラスのことも、両親のことも、大好きだった。
けれど、影を帯びてしまった今のあたしにとって、そんな思い出は過去の幻影でしかない。
ボヤけてしまったあの頃の幸せは、いつの間にかどこかへと消えていった。
自分でも、わかっている。
最終手段を実行してしまえば、この城は血の海になり、あたしは殺人者となることを。
だけど、あたしが優先したい大切なものは、家族でも平和でもなくなってしまったの。
そんなものを宝物扱いできなくなってしまったの。
そう思うあたしは、ひどく残酷で最低で、愚かなのかもしれない。
……それでもいいの。
自分の夢を掴むために出た犠牲者にあたしのことをどう思われようと、あたしは女王になれさえすればそれでいいの。