オーロラの歌



キョロキョロと見渡していると、あたしを囲っていた黒い何かが、あたしの目の前に形を作り出した。


一つに集結した黒い何かは、人の影のような形態になった。



『貴様が、契約者のようだな』



しゃ、喋った!?


……いや、違う。


脳に直接、語りかけているんだ。


テレパス、とは少し違う。


気味の悪い、どす黒い声。


おそらく、この黒い何かこそ、あたしの契約相手である悪霊なのだろう。



『そ、そうよ』



あたしは怖気づくことなく、悪霊に手を差し出した。


さあ、この手を取りなさい。


手があるのかわからないけど。



長い長い沈黙の後、悪霊は『フッ』と笑った。


多分、あたしを観察して、見極めていたんだ。



『……いいだろう』



悪霊はそう囁くと、人の影のような形態をやめて、再びあたしを囲む。


直後、あたしの口から、手から、心臓から、いたるところから、悪霊があたしの中に入り込んできた。



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