オーロラの歌



でもね、安心してお母様。


ちゃんと、隠蔽するから。



あたしの尖ったままの目が、空気を肺へ送り込むように大きく口を開いたお父様の姿を捉えた。


ま、まさか……!


あたしは咄嗟に耳を塞ごうとしたけれど、お父様の歌声が先にあたしの耳を突き刺した。



闇を打ち払う、いやしの歌だ。


お父様の国歌を歌う声が、あたしの心臓に直接届く。



なぜ、あたしにいやしの歌が通じてるの?


あたしは、悪霊と契約を交わし、闇に染まったはず。


あたしの中にはまだ、誰かにすがりたい気持ちでも残っているというの?


光に手を伸ばす自分が、いるとでもいうの?



そんなわけ、ない。



いやしの歌のパワーが、思っていた以上に絶大だっただけだ。


あたしはいやしの歌にグッと耐え、ナイフを持つ手を強めた。


殺さないと。


全員、抹殺しないと。



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