オーロラの歌




『ひどいわ、イービル……』



あたしみたいに、憎しみでいっぱいになっているお母様は、盲目状態なのかもしれない。


だからお母様は、この苦しさを誰かにぶつけたくて、あたしを犯人だと思い込んでいるんだ。


今更、理不尽に責められたって、否定しようとも思わない。


だって、殺そうとしたのは事実なのだから。



お父様の心臓の動きが、ゆっくりになっていく。


青白くなったお父様の顔。


けれど、お父様はまだ歌を歌い続けていた。


あたしにはもう、お父様の歌は響かない。


家族が、あたしを敵だと認識してしまった時点で、アウトなんだ。


ここに、“光”は存在しない。



『おやすみなさい、お父様』



お父様の意識が、遠ざかっていく。


永遠に、眠れ。



『イービル、許されると思っているの!?』



死んでしまったお父様の隣で、お母様が泣き叫ぶ。


誰にも許されなくたって、構わない。



お母様が、お父様を殺したのはあたしだと思い込んでいても、別にいいのよ。


そう思われているなら、それでいい。


闇が、深くなるだけ。



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