オーロラの歌
平和な日常が壊れるのが、怖い。
今まで住んできたこの世界から一歩踏み出すのが、怖い。
私の命を狙おうとしたラジとグリンに、恐怖は感じなかったのに。
今になって、こんなにも怯えているなんて。
未知の領域に飛び込む覚悟が、暗く淀んだ闇に身を投げる勇気が、私にはないのかもしれない。
ここから離れて、逃げたとしても。
それでも、私の罪は消えやしない。
だったら、このままここでのんびり暮らしていても、同じじゃないか。
そう、このまま、現実を忘れて、今みたいに楽しくお茶をして……。
「――大丈夫」
無意識に俯いていた私に、ラジの真っ直ぐな眼差しが向けられる。
ラジの瞳に宿った輝かしい光が、私を照らした。