オーロラの歌



最後にアンジェラスの部屋を見に行こうと歩いていると、たまたまアンジェラスの夫であるジャック様と会った。



『あら、ごきげんよう』


『っ、』



笑顔を作ったあたしに、ジャック様はビクッと肩を上げる。


あたしについた血しぶきにではなく、あたし自身に恐れている……?



『あの、アンジェラスがどこにいるか知りませんか?』



あたしができるだけ穏やかに尋ねると、ジャック様は口をつぐんで、あたしを威嚇するように眉を寄せた。


あたしの中の悪霊が、言っている。


ジャック様はアンジェラスの居場所を知っている、と。


だから威嚇しているのだ、と。



『早く教えて』


『教えるものか』



ジャック様は、アンジェラスの居場所を知っているだけでないようだ。


絶対にあたしに教えようとしない覚悟を持っている。


そんな彼が眩しすぎて、目を細めた。



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