オーロラの歌



肝心なところを話してくれない。


ちゃんと答えなさいよ。


あたしはため息を吐いて、もう一度催眠魔法をかけようとしたが、やめた。


これ以上呪文を唱えても、あたしの体力が消費される一方で、何の意味も無いしれない。



『……そう、逃げたのね』



アンジェラスは、逃げた。


全てを置いて、去っていった。



『ふっ、あはははは!』



これで、あいつは女王にはなれない。


明日行われる即位式には、出られない。


大丈夫よ、アンジェラス。


あたしが代わりに、出てあげるから。



あなたが放棄した女王に、あたしがなってあげるから。



『ねぇ、ジャック様』



ムキになって催眠魔法をかけすぎたせいで、ジャック様はロボットのようになっていた。


あたしは、誰かの血で汚れた手で、ジャック様に触れる。



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