オーロラの歌
ウメおばあちゃんは本の表紙に刻まれたタイトルを見て、目を丸くして、唇を震わせた。
「どうして、あなたが禁断の魔法書を持っているんですか?」
「じいちゃんに頼まれたんです。『これは魔法使いが多くいるこの街ではなく、著者が持っていた方が良いと思う』って」
「じいちゃん?」
「あ、えっと、ウメおばあちゃんが教師だった頃の校長の……」
「それじゃあ、あなたがラジさん、ですか?」
まだ自己紹介をしていないのに、名前を言われて驚いた。
さっき、誰かが俺の名前を呼んだっけ?
「そうですけど」
「ラジさんのことは、よく校長から聞いておりました。とても可愛い孫ができた、と」
「……そうだったんですか」
なんだか照れくさくなって、頭をかく。
「ちなみに僕がグリンで、こっちがシエルだよ~」
話を聞いていたグリンが、自分とシエルを指差しながら、ウメおばあちゃんにそう教えた。
ウメおばあちゃんは、覚えたと言う代わりに、口の端を持ち上げた。