オーロラの歌



いつか、見せてあげたいな。


この噴水から、うっすらと虹が浮かぶくらい、たくさんの水がふき出るところを。


この町が、活気に満ち溢れるところを。



「早く歌ってー!」


「オーロラお姉ちゃん!」


「お歌まだ~?」



そんな“いつか”の話が、遠い未来のものではなければいいな。


近い将来、実現すればいいな。


けれど、今すぐには絶対に不可能だから、私の歌で我慢してね。



「それじゃあ、歌っちゃおうかな」



私がそう言えば、子ども達はわっと盛り上がる。


きっと、私の歌がもたらす幸福は、些細なもので簡単に消えてしまうだろう。


それでも、私は届けたい。


歌を歌い続ければ、幸福は膨らみ続けて、いずれ世界を明るく照らすはずだから。



すぅ、と大きく息を吸う。


ゆっくりと瞼を閉じたら、子ども達が一瞬だけ静かになった。



さあ、紡ごう。


聴いた人の心に、歌を根付かせるように。


歌に込められたお母さんの想いに惹かれるように。



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