オーロラの歌



クリスタル・タウンに無事に到着できたとしても、ラジの話では、アストラル・グラウンドよりもクリスタル・タウンの方が厳重に警備されているらしい。


まあ、クリスタル・タウンに住んでいる人の多くが、貴族や王族の親戚など、位の高い人らしいから、当然ちゃ当然なんだけど。



私達のこれからの旅の課題は、誰にも気づかれずに、クリスタル・タウンの中央にあるセイント城の正門から女王様に会いにいくこと。


どれだけ時間がかかっても、構わない。



「しかも、クリスタル・タウンには王家直属の警備隊が配置されており、その厳しい警備をかいくぐってイービル様にお会いするのは、至難の業でございます」



ウメおばあちゃんの正論に、思わず黙り込む。


長い時間をかけても、警備隊に見つからないとは限らない。


ううん、おそらく十分注意を払っても、周りを警戒しても、警備隊に見つかってしまう可能性が百パーセントに近いくらい高い。


でも、私は……。



「ですので、私をお使いください」


「ウメおばあちゃんを?」


「はい。私は、鷹になれるのです。私の背中に皆様を乗せて、セイント城まで一気に飛ぶことも可能です。そうすれば、警備隊の目を盗んで、セイント城に楽々と侵入できます」



獣族の長であるウメおばあちゃんなら、私達を乗せても、一日かけずに目的地まで連れて行くくらい朝飯前かもしれない。


ウメおばあちゃんの親切な優しさは、すごく嬉しい。



「ありがとうございます、ウメおばあちゃん」



私は申し訳なさそうに微笑みながら、「だけど」と続ける。



「どんなに危なくても、この国全体を自分の目で見たいんです」



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