オーロラの歌



少女の目尻から、ポロッと大粒の涙がこぼれ落ちた。


な、なぜ泣くんだ!?


対応に困って慌てる俺に、



『ごめんなさい』



と、少女は謝った。


なぜ、謝るんだ……?


お前は、泣いただけだろう?


泣くのは、いけないことなのか?



そういえばさっき、母親と過ごした場所とかなんとか言っていたな。


過去形、だった。


もしかして、この少女の母親はもう……。



人と接したのも、会話をしたのも。


人の泣き顔を見たのも。


数十年ぶりのことだった。



だからだろうか。


こんなにも、心が揺れているのは。



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