オーロラの歌
ゼロさんは、私の手を掴んだ自分の手を、ギリッと握りしめて。
無理やり震えを止めようとしていた。
あなたが怖がっているのは、私が嫌なことを思い出させてしまったせい?
それとも、私が左目に触れようとしてしまったせい?
「あの、ゼロさん」
ゼロさんの左目だけを、真っ直ぐ見つめる。
「気味悪くなんてないですよ」
「……え?」
「とっても、とっても、綺麗な目です」
たとえ、その瞳が何も映さなくても。
二つの色が衝突し合っていても。
奥深くに複雑な感情が積もり積もっているその左目を、抱きしめてあげたい。
ひとりじゃないよ、って教えてあげたい。
ゼロさんの左目は、欠陥品なんかじゃない。
特別な何かを秘めた宝箱のような、純粋な目。
「オーロラさん……」
言葉では、うまく伝えられないかもしれないから。
私なりの方法で、伝えさせて。
「ゼロさん、歌はお好きですか?」