オーロラの歌
唐突な質問に、ゼロさんはポカン……と真顔になる。
私はニコッと微笑んで、空を見上げた。
「ゼロさんが抱いている悲しみも、この雨も、晴らしてみせましょう」
灰色の空の向こう側には、鮮やかな青がある。
ただ、壁が立ちはだかっているだけ。
だったら、その壁を崩してしまおう。
きっと、待っている景色は、見たことのないくらい明るいはずだから。
胸元を抑えて、目を伏せて、長く息を吐いてから空気を吸い込む。
歌を紡いで、闇を拭って。
幸せだけを拾い集めようよ。
「♪~~ごめんねって泣い」
「やめろっ!!」
歌を歌い始めた直後、ゼロさんの荒々しい叫び声が耳を突き刺した。
弱まった雨が、樹木を通り越して、私の前髪を撫でる。
ハッと我に返ったゼロさんは、一秒だけ私に送った視線を、手元に滑らせた。
「……歌は、嫌いなんだ」
「そう、なんですか」
凍てついた静寂が、私とゼロさんを纏っていく。
質問したのは私なのに、返事を聞く前に歌っちゃうなんて、バカだなぁ。
反省しなくちゃ。