オーロラの歌



どうして、私に会いたかったのか。


ゼロさんは何者なのか。


また、その答えを聞くのを忘れてしまった。



絡み合った疑問は、解けないまま。


いなくなったゼロさんの面影を瞼の裏に残して、余韻に浸りながら、ひらひらと散った一枚の葉を眺めていた。





しばらくして、バラと木々で造られたトンネルから、額に汗を滲ませたグリンがやって来た。


樹木の影で膝を抱えていた私は、立ち上がってグリンに駆け寄る。



「やっと見つけた~」



息を整えるグリンの全身を、傷を負っていないか、くまなくチェックする。


……傷一つない。


グリンの戦闘力って、そんなに高かったんだ。


普段ゆっるーい感じだから、意外だ。



「あ、今、失礼なこと考えたでしょー?」


「考えてない、考えてない!」



グリンにギロリと睨まれて、私は思い切り首を横に振る。


あ、グリンの頭にバラの花びらが一枚ついてる。



「見つけてありがとね、グリン」



私はその花びらを取りながら、グリンに笑顔を浮かべた。


でも、なんで私がここにいるってわかったんだろう。


狼の嗅覚でわかったのかな?


それとも、なんとなく?



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