オーロラの歌



グリンはボサボサになっていた前髪を、エメラルドグリーンのヘアピンで留め直してから、ニッと得意げに口角を上げる。



「僕ね、セイント城の中に繋がる隠し通路を見つけちゃったんだぁ」


「え!?」


「そこに向かいながら、ラジとシエルを探して合流するってのはどーう?」


「そうだね、そうしよう」



私とグリンは早速公園を出て、グリンをナビゲーターに、隠し通路を目指して走っていった。


高級住宅街を抜けて、いくつかの路地裏を進むと、セイント城の正門と繁華街が見えてきた。


気品溢れる繁華街は、雨が止んだからか、多くの人達で行き交っていて。


繁華街前の大通りを走行している数台の馬車は、どれもセイント城の正門へと向かっていた。



いつもこんなに賑わっているのかな?


今日が特別なだけ?



「こっちだよ~」



グリンは、路地裏の端で街の様子を観察していた私に手招きをした後、行く道を指差した。


セイント城を囲んでいる城壁に沿うようなルートを、脇道を利用しながら、身を屈めて早足で駆けていく。



正門から大分離れた場所で、グリンは足を止めた。


繁華街の栄えた雰囲気すら消え失せた、扉も窓もない古びた屋敷と分厚い城壁の狭間。


静けさが漂うこの場所に、本当に隠し通路があるの?



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