オーロラの歌



不審がっている私をよそに、グリンは城壁にペタペタと手を当て始めた。


グリン、何やってるんだろう。



「あ、あった」



グリンは独り言を呟いて、背伸びをしてやっと届く、城壁の上らへんを片手で押した。


手で押したって城壁が壊れるわけないよ……。


しかし現実は、私の予想の斜め上をいった。



――ゴゴゴゴゴ。



どこからか聞こえてきた、軋めく音が全身に轟く。


な、なんの音!?


先程城壁の一部分を押したグリンの手元をよく見てみると、グリンが押した部分だけ凹んでいた。


おそらく、その部分が隠し通路を開けるスイッチなのだろう。



「オーロラ、何してんの~?行くよー」


「でも、ラジとシエルがまだ……」


「いいから、行こうよぉ」



驚きで固まっていた私に、グリンが声をかける。


行くって、どこからどうやって!?



「こっち、こっち~」


「こっちって…………えっ!?」



グリンが行こうとしている先は、古い屋敷の中。


しかも、さっきは扉や窓が一つもない、変哲な屋敷だったのに。


今は、壁の一部が消えている。



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