オーロラの歌
フツフツとこみ上がってきた怒りをどうすることもできなくて、八つ当たりで男二人に殴りかかろうとした俺を、ラジが引き止めた。
「気持ちはわかるが、落ち着け」
「こんな時に落ち着いていられるか!」
オーロラが殺されるんだぞ?
もう始まっているかもしれないパーティーで。
それなのに俺は、こんなところで何をしているんだ……!
「くそ……っ」
無力な拳で、ドン、と勢いよく壁を叩く。
オーロラが旅立つことにさえ、心にぽっかりと穴が空いたような寂しさを感じたというのに。
オーロラがこの世を去ってしまう、そう想像しただけで、恐怖で目眩がする。
恐ろしくてたまらない。
唯一無二の存在が、いなくなるなんて。
そんなの、俺には耐えられない。
「あの男二人の話がただの噂だったとしても、オーロラが既に捕まえられていたとしても、俺達の行き先は変わらねぇだろ?」
ラジの低い声が、耳の奥で溶ける。
あぁ、そうか。
俺だけじゃない。
ラジも、悔しくて辛くて。
それでも、オーロラの無事を祈って、オーロラへの想いを糧に、怒りを抑えているんだな。
「……あぁ、そうだな」
パーティーが開催されてはしゃいでいる街の奴らなど放って、俺達はただひたすらに進むだけ。
オーロラのいる場所へ。