オーロラの歌



時間がない?


準備って、何の?



「失礼いたします」


「え、あ、うわっ」



シエル以上に愛想のないメイド達は、軽々と私を持ち上げて担いだ。


な、なに!?


なんか怖いんですけど!



「オーロラ、行ってらっしゃ~い」


「ぐ、グリン……!」


「またあとでね」



薄情なグリンは手をひらひらと振りながら、メイド達によってどこかに連れて行かれそうになる私を引き止めずに見送った。



連れ込まれた先は、隠し通路から出てすぐのところにある、セイント城のとある一室。


メイド達がバタン、と扉を閉めると、ようやく私を解放してくれた。



何なんだろう、この乙女チックな部屋は。


いくつものドレスにメイク道具、ゴージャスなアクセサリー。


女の子による女の子のための部屋みたいだ。



って、それよりも。



「あの、グリンを置いてきちゃったので……」


「オーロラ様、こちらの衣装にお着替えください」


「衣装?」



私の言葉を無視したメイドの一人が、クローゼットから淡いピンクのドレスを出して、私に渡した。



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