オーロラの歌



深すぎる闇を含んだナイフが、物凄い速さで近づいてくる。


もうダメかもしれない。


息を呑み、ポツリ、と一滴の涙がこぼれ落ちた瞬間。



――バンッ!!!



凄まじい音を立てて、大広間の扉が開いた。


女王様はその音に、あと数ミリでナイフが私を仕留めるところだったが、やむを得ず動きを止めた。



「誰……?」



女王様も私も、大広間にいた全員が扉の方に注目する。


間一髪のところで助かったけれど、誰が扉を開けたの?



「“ウッド・ラピス”」



静まり返った大広間に、聞き覚えのある声が響き渡った。


この声って……!



「何なのよ、これは!」



その声が唱えた呪文によって、突然床から出てきた木々が女王様の体を締め付けて、女王様を取り押さえた。


女王様は体に絡みつく木々を取ろうとするが、むしっても切り離しても、木々の成長は止まらない。


おかげで、私の口を抑えていた女王様の手が離れた。



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