オーロラの歌



私を取り返したラジとシエルは、かけた魔法を消した。


私を助けるために拘束した光の縄も消えて。


ラジは、抱きかかえていた私を下ろした。



「間に合ってよかった」


「無事でなによりだ」


「二人とも、ありがとう」



臆病な私一人だけじゃ非力すぎて、何一つ変えられなかった。


頼ってばかりじゃダメだってわかっているのに。


結局、二人に心配かけて、迷惑かけて、助けてもらって。


ごめんね。



「早く逃げるぞ」



ラジとシエルが、大広間から出ようと急かす。


けれど、私は振り返って、ステージの上にいるグリンを視界に映した。



「グリン!」



叫んでも、グリンは俯いて応えてはくれなくて。


胸が、チクリと痛んだ。



「オーロラ、行くぞ!」



シエルに手を引かれ、大広間から出る。


私は、見えなくなるまでグリンのことを見つめていた。



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