オーロラの歌



ラジの正論に、ゼロさんは意味深に目を伏せる。



「今は本当の僕ですが、すぐに元に戻ってしまうんです」


「え?」


「だからその前に、オーロラさんを……姉さん達を逃がします」



初めて、ゼロさんに「姉さん」と呼ばれて、涙がこみ上げてきた。


私達を逃がしたら、ゼロさんが危ないんじゃないの?



「僕を、信じてください」



ゼロさんの真っ直ぐさが伝わったようで、ラジとシエルは仕方がなさそうに私の手に触れた。


それと同時に、私達の体がふわり、と空中に浮かぶ。


もしかして、魔法?



ゼロさんの前髪もうっすらと舞い上がり、ゼロさんの左目が見えてしまった。


その左目は、雨宿りした時よりも赤くなっていて、黒色はほとんど無いに等しかった。


どこか脆そうな左の瞳は、チカチカと彩りを変えて、黒色を赤色が食らっていく。



「姉さん、どうか生きて」


「ゼロさ……っ」




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