オーロラの歌



僕の肩を掴む力が、強まった気がした。



『今から、一時的にでも洗脳が解ける魔法を、お前の盲目である左目にかける』



それってつまり、お母様の魔法を無効化にする魔法ってこと?


そんなすごい魔法があるなんて、知らなかった。


もしかして、お父様が今ロボットのようではないのは、その魔法のおかげなの?



『あくまでも、催眠魔法が解けるのは一時的なものだ。しかも無効化すればするほど魔力は弱まり、いつか魔法を跳ね返せなくなる』


『……』


『それでも、時々でもいいから、お前を自由にしてやりたいんだ』



じわりじわり、と涙が溢れた。


ありがとうって伝えたいのに、お父様に抱きつきたいのに、身体が言うことを聞いてはくれなくて、もどかしさが募る。



『こんなことしかできない父親で、ごめんな』



そんなことないよ。


すごく、すごく、嬉しいよ。


その声は喉まで出かかっていても、届かない。



お父様は、僕の前髪に隠れた左目に人差し指を近づけ、とある呪文を唱えた。


無効化する魔法をかけられた左目が、ひどく熱くなる。



『左目に蓄えさせた無効化できる魔力を使えば使うほど、左目は赤色に変わっていく』


『……』


『完全に黒から赤に染まってしまった時が、洗脳が解けなくなるサインだ』




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