オーロラの歌
数年後。
十四歳になった僕は、お母様と使用人が話しているのを偶然聞いてしまった。
『女王様、もう一つ、ご報告がございます』
『何?』
『アンジェラス様には、一人の子どもがおりました』
アンジェラスって、確かお母様の妹だったような……。
その人が、お母様を狂わせた張本人。
『その子どもは、いやしの歌の能力を持っているようです』
また、いやしの歌、か。
この地獄のような日々の始まりを作り出してしまった要因を、呪いたくなる。
『その子どもの名は、オーロラ』
僕は、知っていた。
お父様が、アンジェラスという人の夫だったことも。
お母様が子どもを産むためだけに、お父様を利用していたことも。
だから、わかってしまったんだ。
オーロラという名の少女が、僕の腹違いの姉だって。
けれど、気づいていない振りをした。
知ってはいけない事実だと、悟っていた。
偽ることに、躊躇はなかった。