オーロラの歌




洗脳を跳ね返す魔法が消えかかりそうになり、姉さんとの対談も終了。


別れ際、ベンチから数歩離れた僕の背中に、姉さんが問いかけた。



『どうして私を、ここに呼んだんですか?』



また、聞かれるとは思っていなかった。


僕は油断していた。



『オーロラさんに、会いたかったんです』



答えてはいけない、と思いながらも、体は勝手に振り返っていて。


透明感に塗れた声が、ずっと言えなかった想いが、喉から漏れてしまった。



『え……?』


『ずっと、ずっと、会いたかったんです』



熱を帯びた左目が、疼く。


溢れそうになった涙を、必死にこらえた。



『あなたに会えて、嬉しかったです』



『また明日、会いましょう』と言えることが、僕にとっては奇跡のよう。


当たり前に姉さんの近くにいられる日常が訪れなくても、構わない。


姉さんとの思い出が、欠片だけでも胸に在るから。



< 439 / 888 >

この作品をシェア

pagetop