オーロラの歌
洗脳を跳ね返す魔法が消えかかりそうになり、姉さんとの対談も終了。
別れ際、ベンチから数歩離れた僕の背中に、姉さんが問いかけた。
『どうして私を、ここに呼んだんですか?』
また、聞かれるとは思っていなかった。
僕は油断していた。
『オーロラさんに、会いたかったんです』
答えてはいけない、と思いながらも、体は勝手に振り返っていて。
透明感に塗れた声が、ずっと言えなかった想いが、喉から漏れてしまった。
『え……?』
『ずっと、ずっと、会いたかったんです』
熱を帯びた左目が、疼く。
溢れそうになった涙を、必死にこらえた。
『あなたに会えて、嬉しかったです』
『また明日、会いましょう』と言えることが、僕にとっては奇跡のよう。
当たり前に姉さんの近くにいられる日常が訪れなくても、構わない。
姉さんとの思い出が、欠片だけでも胸に在るから。