オーロラの歌




でも、こうするしかないんだ。


これ以上、姉さんがお母様に辛い思いをさせられるのは、嫌なんだ。



さっきまで振っていた雨は、いつの間にか止んでいた。



『いつか、歌が好きになったら、一緒に歌いませんか?』



姉さんは顔を上げて、無防備に微笑んだ。


どうして、姉さんはそんなに強くいられるの?


雲から顔を出した太陽が、姉さんを神々しく照らす。



約束を守れないかもしれないけれど、“いつか”がやってきたら、その時は僕と家族として会ってはくれないだろうか。


そんなこと言えやしないから、返事はせずに目を細めた。




姉さんと別れて、テレポーテーションでセイント城に帰った。



『あら、遅かったわね』



城に着いてすぐに、お母様と出くわした。


ロボットに戻ってしまった僕に、お母様が言う。



『頼んだ物は買ってきてくれた?』


『はい』


『おつかいありがとう、ゼロ』



グリンにテレパスで姉さんの居場所を教えたから、きっと今頃、姉さんはグリンさんに隠し通路へと案内されているだろう。


姉さんのパーティーの参加は、もはや不可避。


僕は、姉さんを傷つけてしまうかもしれない。



それでもどうか、姉さんを殺さないで。



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