オーロラの歌



演技は得意だった。


笑顔が描かれた鉄の仮面を被って、簡単に嘘をつく。


何かを盗む時、騙し合いは必要不可欠。


悟られないように、気づかれないように、本心を捨てていく。



『いや、お前で合っているはずだ。さっきお前がパンを盗んでいるところを、見ちまったからな』


『……あっそ』



便利屋のリーダーらしき強面なマッチョ野郎が、上から目線に笑った。


嘘がバレて、どうでもよくなった僕は、一気に冷たくなる。


僕は自分が生きていれば、それでいい。


他のことは、どうだっていいんだ。



『お前、俺らとつるまないか?』


『はあ?』



何を言い出すかと思ったら……。


そんなつまんない話をしにきたの?


めんどくさいな~。



『嫌だ』


『そう言わずにさ。俺らは、表向きは便利屋っつーことになってるけど、裏で殺し屋をやってんだ』



マッチョ野郎の衝撃的なカミングアウトにも、僕は動じない。


だから何?


殺し屋って言ったら、僕が怯えて言うこと聞くとでも思ってるわけ?



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