オーロラの歌






六年の月日が流れた、ある日の夕方。


いつも通り、殺し屋としての仕事を全うした帰り道。


明るさを苦手とする路地裏で、誰かとぶつかってしまい、尻餅をついた。



『あら、ごめんなさい』



頭上から聞こえた品のある声に、顔を上げた。


そこにいたのは、この国の女王様だった。


な、なんでこんなところに、女王様が……!?



『す、すみません!!』



僕は慌てて土下座をして謝った。


女王様は笑顔で、僕を許してくれた。


女王様って優しい人なんだな、と最初は思ったが、女王様の笑顔を見て気づいた。



……あ、僕と同じだ。



作られたその笑顔は、不気味なくらい最高な出来栄えだった。


きっと、怒り叫んでいる内心を隠して、お忍びでやってきたことが騒ぎにならないように、アストラル・グラウンドでの自分の評価を下げないように、僕に笑顔を向けているんだ。



『あの、この近くに有能な殺し屋の狼がいると聞いてきたんですが、ご存知ありません?』



それはまさしく、僕のことだった。


どうして、女王様が殺し屋を……僕を探しているんだ?


まさか、僕を打ち首にするために?



< 450 / 888 >

この作品をシェア

pagetop