オーロラの歌





『♪~~物語はハッピーエンド 君の笑顔が見たいんだ~~♪』




僕は今、お前を殺そうとしたんだぞ?


それなのに、なんでそんな優しい歌声を紡げるんだよ。


オーロラの歌にドクンと、洗脳されてさらに黒くなった心が軋んだ。


右頬の痛みが溶けて、消えていく。



『……これが、』



息苦しいのに、辛くはなくて。


僕を惑わせる歌を、ずっと聴いていたくなる。



『いやしの歌、か』



沈んでいく声には、もどかしさが込められていた。


……卑怯だな、この能力は。


悪意がまるごと吹き飛ばされてしまった。


ずるいよ。


こんなの、殺せるわけないじゃん。



『治ってよかった。……あれ?どうしたの?』


『どうもしてないよ~』



いやしの歌は、僕が作り上げた偽りの仮面をいとも簡単に壊してしまった。



初めてだったんだ。


殺したくないと思うのも。


笑顔を作るのが難しく感じるのも。



< 455 / 888 >

この作品をシェア

pagetop