オーロラの歌
『♪~~物語はハッピーエンド 君の笑顔が見たいんだ~~♪』
僕は今、お前を殺そうとしたんだぞ?
それなのに、なんでそんな優しい歌声を紡げるんだよ。
オーロラの歌にドクンと、洗脳されてさらに黒くなった心が軋んだ。
右頬の痛みが溶けて、消えていく。
『……これが、』
息苦しいのに、辛くはなくて。
僕を惑わせる歌を、ずっと聴いていたくなる。
『いやしの歌、か』
沈んでいく声には、もどかしさが込められていた。
……卑怯だな、この能力は。
悪意がまるごと吹き飛ばされてしまった。
ずるいよ。
こんなの、殺せるわけないじゃん。
『治ってよかった。……あれ?どうしたの?』
『どうもしてないよ~』
いやしの歌は、僕が作り上げた偽りの仮面をいとも簡単に壊してしまった。
初めてだったんだ。
殺したくないと思うのも。
笑顔を作るのが難しく感じるのも。