オーロラの歌









――オーロラ達がいなくなったセイント城。


パーティーの招待客が帰った大広間には、静寂が漂っていた。



「ごめんね、オーロラ」



ステージの上で一人、壁に寄りかかる。


前髪からヘアピンを外して、ヘアピンをギュッと握り締める。



こんな形で真実を伝えることになるなんて、思ってもみなかった。


オーロラ、泣いてたな……。



「ははっ、完全に敵になっちゃったなぁ」



不格好に笑ってみるけど、虚しくなるだけだった。


オーロラの手を、取れなかった。


せっかく差し伸べてくれたのに。


パーティー前に女王様にかけられた催眠魔法が、重たい罪悪感が、拭いきれない苦しさが、もう遅いよ、と僕に囁いて、オーロラの手を拒ませた。



オーロラの歌を聴いて、すぐに洗脳が薄れていって。


今は洗脳が綺麗さっぱり消えているなんてさ、僕もラジとシエルと同じように、結構重症だったんだなぁ。



手のひらに包まれたヘアピンに、チュッ、とキスを落とした。


後悔だらけのキスを。



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