オーロラの歌
もどかしそうに脈を打って、鼻の奥がツンとして。
熱を帯びた頬を冷ますように、ポツリ、とひと粒だけ涙がこぼれた。
あぁ、そうか。
私、ラジのことが好きなんだ。
どうして今、知らず知らずのうちに芽生えていた想いの名前をわかってしまったのだろう。
お母さんが、“あいのうた”が、教えてくれたの?
「ど、どうしたんだ!?なんでまた泣いて……」
「な、なんでもないの。本当だよ」
一生、ラジに好きだと伝えるつもりはないから。
せめて、涙で告げさせて。
あなたのことが、大好きです。
夜の闇に溶けていく涙に、儚い恋情が添えてあったことを知っているのは、きっと満月だけ。
けれど、静寂の中、私が覚悟を積み重ねたことは、誰も知らない。
「ねぇ、ラジ。明日、また一緒に、セイント城へ行ってくれる?」
私が弱々しく聞いたら、私が泣いたことにまだオロオロしていたラジは、ニッと口元を緩めた。
もちろんだ、と言わんばかりに。
今度こそ、私は逃げない。
今でも信じてる。
暗闇の先には光が待っている、と。
たとえ、その光に私が触れられなくても。
私の望む結末が訪れることを、信じてる。