オーロラの歌



料理を運んでいる、ということは、女王様達はこれから昼食なのかも。


それじゃあ、あのメイド達をつけて行けば、女王様達のいるところへ行けるんじゃない!?



「あのメイド達を追おう!」


「あいつらを追えばいいんじゃね?」


「あいつらを追うべきだ」



ラジとシエルも同じことを考えていたらしく、三人の声がぴったり重なる。


私達は顔を見合わせて、笑みを浮かべた。



メイド達にバレないように、一定の距離を保ちながら尾行し始める。


想像していた以上に広い城に驚かされて、時々メイド達を見失いかけた。



ここが、お母さんと女王様が育った場所。


そして、お母さんが女王様に追い出された場所。



お母さんは手紙に『誰も憎まないで』と綴ったけど、お母さん自身はどうだったんだろう。


自分を殺そうとした女王様のことを……お姉さんのことを、憎んでいたのだろうか。


女王様が、お母さんが生きているうちに謝罪をしていたら、お母さんは女王様を許したのだろうか。



――唐突に、脳裏にお母さんの歌声が過ぎった。



どうしてこんな時に、お母さんのこもり唄が……?


“君に贈る幸せのかたち”のメロディーが、だんだんと霞んでいく。



「オーロラ?」



無意識に立ち止まっていた私に、ラジが不思議そうに声をかけた。


ハッ、と我に返る。


なんだったの、今のは。



「早く行くぞ」


「あ、う、うん!」




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