オーロラの歌
廊下を忍び足で歩き、階段を下っていたら、いつの間にか、随分と離れたところまで来ていた。
そしてついに、メイド達はとある部屋の前で足を止めた。
メイド達はコンコンッ、と軽快にノックをしてから、部屋の中へ入っていった。
「確かめてくる」
そう呟いたシエルは、姿を消して、メイド達が入っていった部屋の様子を窺ってきた。
すぐに戻ってきて、実体化したシエルは、不敵に笑いながら首を縦に振った。
女王様が室内にいるんだ……。
急に、心臓が忙しく鳴り響く。
手が震えてきた。こういうのを武者震いって言うのかな。
「行こう、二人とも」
深呼吸をして、一歩ずつ踏み出していく。
恐怖に打ち勝て、自分!
部屋の前で、一旦静止する。
ラジとシエルは、扉を開ける準備ができていると、私にアイコンタクトで知らせてくれた。
こんなにも果敢に過酷な闘いに挑めるのは、勇ましい仲間と、温かな歌があるから。
横目に見える、凛々しい二人の姿が、私の心を支えてくれる。
落ち着いてきた鼓動でリズムを取りながら、両の手のひらを合わせた。
口を大きく開いて、めいいっぱい空気を吸い込む。
タイミングを見計らって、ラジとシエルが扉をギィ……と開けた。
さあ、歌おう。
想いが詰まった“あいのうた”を、届けよう。
雨雲を晴らして、空の果てにいる、お母さんの元まで。
「♪~~世界の彼方で待ってる 眠っていた愛に囁こう~~♪」