オーロラの歌



全開になった扉から、私の歌声が透き通る。


広間のような部屋にある長いテーブルの奥の方で、用意された料理を食べようとしている女王様と、その脇にゼロさんとグリンを見つけた。


女王様に睨まれたが、ひるまずに歌い続ける。




「♪~~コップいっぱいの涙と 架けられた虹が照らす~~♪」




お母さんが私のために作ってくれたこの歌なら、女王様に効くかもしれない。


ドクン、と心臓が鈍い音を鳴らしたことに気づかぬ振りをして、祈りながら歌う。


この歌が、女王様の心のひだまりになりますように。



「まさか、あなた達から来てくれるなんて……」



椅子に座っている女王様が、一人のメイドに出されたパン料理に、グサリとフォークを垂直に突き刺した。


私の声が一瞬だけかすれた時、女王様の高らかな笑いが響く。



「すごく、嬉しいわ」



女王様は椅子から立ち上がり、私達の方へ近寄る。


二回も歌ったのに、前と同じように女王様にはこれっぽっちも効果が表れていなかった。


“あいのうた”でもダメなの?



「今日こそ、あなたを殺せるのね」


「……っ」



どうしたら、女王様の闇を払えるんだろう。


歌に込める私の想いが、足りていないの?


それとも本当に、いやしの歌では女王様に光を与えられないというの?



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