オーロラの歌
私、このまま首にナイフが刺さって、死んじゃうのかな?
……嫌、だなあ。
まだ何もできていない。
この世界を、変えたい。
私には、やらなければいけないことがある。
まだ生きていなければいけない。
――ザシュッ、とナイフが皮膚を突き破る音が、すぐ近くから聞こえた。
だが、首に痛みはない。
どう、し、て……?
ゆらりゆらりと泳ぐ目に、首に痛みが走らない理由が焼き付いた。
私の中に、瞬きすらできないくらいの衝撃が落ちる。
一瞬というわずかな時間でさえ、恐ろしく長く感じた。
「え、」
最初に漏れたのは、自分でもびっくりするほど間抜けなもので。
動揺を隠せなかった。
「っ、し、シエル!!」
名前を呼べたのは、一分経過した頃だった。
私を庇ったシエルの胸には、私の首に刺さるはずだったナイフが、奥深くまで練りこんでいた。
ボロボロと、涙が伝う。