オーロラの歌



……思い出した。


三人のメイドを尾行していた時に、お母さんの歌声が耳をかすめたことを。


私はなんの躊躇もなく、お母さんの懐かしい手のひらに、自分の手を重ねた。



『オーロラ』



お母さんが私を引っ張って、私を光が差し込んでいる方へと連れて行く。



『輝きを纏う幸せを、「君」に届けて』



え?「君」に?


でも、お父さんはもう死んじゃって、届けようにも届けられな……。



瞬間、“君に贈る幸せのかたち”の歌詞が、ブワッと私の脳裏を駆け巡った。



もしかして、「君」って……!


私の気持ちを読み取ったお母さんは、私の手を握る力をギュッと強めて、私に微笑んだ。


暗闇が遠ざかって、なかったはずの光が私を包む。



途中で止まったお母さんは、私の背中を押して、暗闇を抜けた光の先に出してくれた。


顔だけ後ろを振り向くと、お母さんは微笑んだまま私を見守っていた。



『ありがとう、お母さん』



私がそう伝えると、光の先にあった黒い殻にヒビが入った。


悪夢は終わりにしよう。


生きて、皆と再会しよう。


笑顔を満開に咲かせて。



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