オーロラの歌
相変わらず、椎本くんってクールだなぁ。
笑ってるところ、滅多に見たことない。
サラサラな黒髪。
美麗すぎる顔面。
そんなかっこいい彼に、近づきたい女の子はたくさんいる。
が、近寄りがたく、アプローチするにもできないらしい。
特別好意のない私にも、愛想ゼロだったし。
壁、みたいなのがあるのかもなぁ……。
呆然と空を眺めながら、見失った花びらを探していると、あっという間に学校に着いた。
下駄箱で靴を履き替えていると、
「おっはよー!」
朝から元気な挨拶が響いた。
声のした方に顔を向ければ、そこには同じクラスで親友の椿 佳那がいた。
茶髪をふたつに結っている彼女は、持ち前の明るさで、どんなときでも笑顔にさせてくれる。
「おはよう、佳那」
「あ、髪切ったんだね!」
「どうかな?」
「すっごく可愛いよ」
二年生になったんだし、少しでも大人っぽくなりたい。
そこでまず形から入ろうと、腰あたりまであったダークブラウンの髪をばっさり切った。
我ながら、ボブになった髪をけっこう気に入っているんだ。