オーロラの歌



佳那にほめられたことが嬉しくて、鼓動を鳴らした。


佳那も上履きを履いて、一緒に教室に行こうとしたら、下駄箱と廊下の境目にある低い段差につまづいてしまった。



「わっ」



転びそうになった私の腕を、誰かにグイッと後ろに引っ張られた。


おかげで、痛い思いをせずにすんだ。



「大丈夫?」


「は、はい」



振り返って、頭を下げる。



「助けてくれてありがとうございました」


「どういたしま、し……て」



感謝を伝えようと、ふわりと柔らかく微笑む。


私を助けてくれた、茶とアッシュピンクがちょうどよく混ざった髪色をした人が、頬を赤らめた。


どうしたんだろう、赤くなったりして。


私はもう一度お辞儀をして、佳那と一緒に生徒玄関を離れた。



「ねぇ、さっきの人さ、江藤 駿【エトウ シュン】先輩じゃない?」


「江藤?誰?」


「えっ、知らないの?常に女子に囲まれてるプレイボーイって噂の三年だよ」



プレイボーイ?


女好きってこと?


聞いたことがなくて首を傾げたら、佳那は珍しそうに目を見開いた。



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