オーロラの歌





私達が去った生徒玄関では、髪をハーフアップにしている江藤先輩が、ボーッとしながら靴を履き替えていた。



「おっす、駿」



江藤先輩の友達が挨拶しても、江藤先輩は上の空。


友達は不思議に思って、江藤先輩の顔の前で手を振る。



「どうした?」


「……なあ、一目惚れって信じるか?」


「はあ?」



江藤先輩は、色っぽくため息を吐いた。



「俺、一目惚れしちゃったかも」






そんな会話を知る由もない私は、教室に入り、席に着く。


不意に視界に映った、私の席とは近くも遠くもない席に座っている、椎本くんの横顔。


そういえば、この前、佳那が熱弁してたなぁ。


椎本くんの中性的な顔立ちと、影を帯びた一匹狼なところについて。



頬杖をついて、椎本くんをじっと凝視してみる。


どうして、椎本くんはあんなに周りと関わらないんだろう。


いや、まあ、交友関係は個人の自由だけどさ。


冷たいバリアを張って、一人でなんでもできますって雰囲気を出してる椎本くんを、数名の女の子がチラチラ見て、キャーキャー騒いでいる。


ただクールってだけで、優しくも王子様キャラでもない椎本くんのどこがいいんだろう。



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